放射線による健康被害の科学的事実

福島原発事故以来、調べれば調べる程に、LNT仮説は冷戦時に核戦争を抑止する効果を持っていたので、政治的意味で過大な危険性を負わされたのではないかと考えています。
現在でも、核兵器不拡散を論理的に支えているのはLNT仮説である事は事実です。
 
一方で、LNT仮説が要求する過大な安全性が、原発の高コスト体質を支え、新期事業者や、新興国の企業の業界への参入障壁を築いています。さらには、廃棄物を業者にとっての宝の山に変え、原発利権の温床となっている事も事実です。
 
国民が放射線防護に対する知識を十分に持ち合わせていない日本では、全てを厳密に運用するとパニックが発生します。
LNT仮説が正しいとしても、福島原発による死者は将来的にも軽微でしょう。
まして、LNT仮説が間違っていたならば、もし福島原発事故による地域経済の破綻で、自殺する人が続出したり、ストレスによる健康被害が発生するならば、その原因はLNT仮説という事になります。
チェルノブイリの被害でも、実際には失業によるアルコール中毒などが多いのが現状です。
 
1) LNT仮説は、線量(Sv)と線量率(Sv/年)をあえて混同する事で、人体に害があるとされている放射線量を大きく誤魔化している
2) LNT仮説は、放射線によるDNAの修復能力の向上や免疫反応の向上を考慮していない
 
 
現在科学的に判明している事柄は、
1) 100(mSv/年)以下の放射線による健康被害の科学的事実は確認されていない。
   これは(/年)という単位では無く、原爆の様な一瞬の被曝値なので、(/年)という放射線線量率という単位で考えれば、相当高い数値になる。
2) 「LNT仮説」は100(mSv)以下の危険性は確認出来ないので、閾値無しの直線外挿法(直線補完)によって1(mSv)までを危険とした。
3) さらに線量率の単位時間を(/年)とする事で、被曝限度量の限界を一気に低いレベルに引き下げるトリックを使っている。
4) 放射線は様々な発癌因子と同様に、活性酸素を発生させる事でDNAを切断する。
5) ストレスでも、タバコなどの発癌物質でも、DNA損傷のメカニズムに大差は無い。
6) 生物のDNAは損傷の殆どを完璧に修複する能力を有する。
7) 稀に修複不能のDNAは複製が停止され、細胞の自殺(アポトーシス)が誘発される。
8) 長い年月に渡り、何か所かのDNAに損傷が蓄積され、アポトーシスを回避した細胞が、何かのきっかけで癌化する。
9) 癌化した細胞は、免疫細胞によて捕食され癌の進行は防がれる。
10) 稀に免疫細胞の攻撃を誘発しない癌細胞が、病気としての癌に発展する。
11) 活性酸素の発生は、現在問題にされる様な放射線レベルよりも、生物が生きている事自体の代謝によって発生する量が圧倒的に多く、放射線による活性酸素の発生量は、代謝によるそれの誤差程度しか無い。
 
さらに、
1) LNT仮説が問題視する様な微弱な放射線による癌の発生は、その他の発癌物質や、代謝による活性酸素による影響の誤差程度である
2) 余りに発生確率の低い事象は、統計学的誤差の範囲に隠れてしまい、抽出する事が不可能である
3) 放射線による発癌要因が無い訳では無く、多くのその他の要因の中に埋もれてしまい、大規模な被曝実験を行わない限り抽出が難しい
 
放射線によるDNAの損傷も、その他の原因によるDNAの損傷も、その殆どはDNAの修復機能や、免疫反応によって癌化する事はありませんが、取りこぼしにより、確率的に癌は発生し、低線量率の放射線による癌の発生確率は、あまりに低いので、その他の要因の中に埋もれています。
また、LNT仮説が根拠とするデータは、広島や長崎の様に一瞬で100(mSv)の被曝をしたデータである事に注意が必要です。
 
普段はさぼっているDNAの損傷に対する身体の防御機構が、低線量率放射線の照射によって活性化されることは、科学的にも確認されている現象です。
1) 低線量放射線の照射によってDNAの修復能力は飛躍的に向上する
2) 低線量率放射線の照射によって、Nキラー細胞が増加するなど免疫が向上する。
 
この効果を用いて、癌の放射線治療の前段階として、低線量率放射線を照射し、人体細胞の放射線に対する耐性を高める治療法が実用化されています。
 
 
*ICRPが50年前に、「LNT仮説」で1(mSv/年)も危険とした理由に、80年前のショウジョウバエの実験の存在があります。
オスのショウジョウバエの生殖細胞に放射線を照射したら、子孫に奇形が発生したのです。
この実験により、放射線は遺伝的に影響があるとされました。  80年前にはDNAの存在すら知られていませんでした。
ところが、カリフォルニア大学が重大な発見をします。
なんと、オスのショウジョウバエの生殖細胞にはDNAの修復機能が無かったのです。これは様々な生物の細胞の中でも、特異的な細胞でした。
神のいたずらとも言える、この80年前の実験を基に、ICRPは50年前に、放射線の防護基準を「1(mSv/年)」と定めています。
近年では放射線生物学の多くの研究者が、細胞のDNAは放射線に対して優れた修復力を持つと主張し、LNT仮説の過剰安全性の問題を指摘しています。
 
 
子供の甲状腺癌は、成長期の子供の甲状腺に放射性ヨウ素が大量に集まる事で発生します。
 
ヨウ素131は半減期が8日と、プルトニウムと比べても比放射能(放射線を発生する能力)が10万倍も高い物質です。
被曝の恐れのある地域での軍事行動では、軍隊は予め安定ヨウ素剤を服用し、甲状腺に放射性ヨウ素を取り込まない様にしてから作戦行動を行います。
 
チェルノブイリの子供達は、事故の現状が伏せられていたので、事故後の短期間に、高濃度に放射性ヨウ素を牛乳や母乳から摂取しました。
ヨウ素131の半減期は8日と短いので、1カ月程度、汚染地域から避難していれば、避けられた被曝です。
あるいはポーランドの様に、事故後速やかに全国民に安定ヨウ素材を服用されば、この被害は防げたはずです。
 
チェルノブイリの子供達の甲状腺がヨウ素131によって高濃度に汚染された事は事実ですが、LNT仮説否定派が主張するDNAの修復能力があるならば、子供の甲状腺癌の発生は、もっと少ないはずです。
 
1) 子供の甲状腺は放射線に対して特に影響を受けやすい
2) 安定ヨウ素剤の過剰投与による炎症
3) チェルノブイリ原発の炉心冷却の為に投入された2500tの鉛が気化して、牛乳や母乳から子供達に摂取された。
これらの複合的要因とも考えられます。
 
鉛は沸点の低い金属です。燃え盛る原子炉の上空から投入された2500トンにも及ぶ鉛のそれなりの量が気化して、ヨウ素などが降り積もった地域を同様に汚染しているはずです。
チェルノブイリ周辺の高放射線汚染地域は、高濃度の鉛で同時に汚染されている可能性があります。
チェルノブイリの放射性ヨウ素の量を福島の10倍としても、片や1.6Kgの放射性ヨウ素と、片や2500tの何パーセントかの鉛です。
チェルノブイリ周辺住民の母乳は、鉛汚染されているという報告もあります。鉛の人体への影響は、免疫疾患様の症状や、催奇性、さらには免疫異常も見られます。
 
チェルノブイリでは様々な健康被害が報告されていますが、癌や疾病の要因としては、放射線よりも、強制移住によるストレスや、失業によるアルコール依存の方が遥かに放射線よりも強い影響を身体に与えます。
 
最近、日本ではセシウムの土壌汚染が問題となっています。
セシウム137はカリウム40と同様に、2価の化学特性を持つβ線核種です。カリウム40は、天然に存在する放射性元素で、土中のカリウムに一定割合存在します。カリウム40は、牛乳1リットルに50Bq、人間の体内には6000Bq存在すると言われています。
私達は、日々6000Bqのβ線被曝を体内からしているのです。
 
福島原発周辺地域の住民の、ホールボディーカウンターの計測値では、放射性セシウムの値は、天然由来のK60の1/5程度でした。
 
チェルノブイリの子供達は食生活上、甲状腺に安定ヨウ素が不足していました。一方、日本人は普段の食生活から安定ヨウ素で甲状腺が満たされているので、もし仮にヨウ素131だけがチェルノブイリの子供の甲状腺癌の原因だったとしても、福島周辺の子供達の甲状腺癌の発生率は、チェルノブイリに比べて格段に小さい事が予想されます。
放射線ヨウ素131の数値は、既に十分下がっていますから、武田先生のおっしゃる様に、ヨウ素131に対する警戒は、新たな再臨界が発生しないかぎり不要です。
 
後はセシウム134と137に対する警戒ですが、東京周辺などはあまり神経質になる事で精神的ストレスを貯め込む方が、発癌リスクを高める結果と成る事に注意が必要です。
福島原発周辺でも、LNT仮説の問題点を理解していれば、恐れるに足らない数値、言葉は悪いのですが、免疫反応やDNAの修復が促進される影響でむしろ健康になるレベルだとも言えます。
 
福島が今後、普通の生活を取り戻せるかどうかは、LNT仮説の検証を抜きにしては考えられません。
LNT仮説が神学論的罠に陥っている限りは、福島はずっと汚染地域という汚名を着る事となります。
反原発派も原発擁護派も、LNT仮説の検証無くしては、安心して暮らせないのです。科学的には非常に怪しいLNT仮説に、日本と福島が囚われている事を、日本人が政府に声を大にして訴えるべきです。
 

 

 

■ DNAの一本鎖切断は簡単に修復できる ■

 

放射線による被爆の影響は、細胞の遺伝情報DNAの破壊によるものです。
放射線はそれ程危険で無いという根拠は、DNAの修復が従来考えられていたよりも高度で精密なシステムで働いている事が近年判明した事です。

DNAが2重螺旋構造をしている事は良く知られています。これは、DNAのバックアップ機能と考えられています。
活性酸素や放射線によって、二重螺旋のどちらか一方が切断されても正常なもう片方から、修復する事が可能です。

これはDNAをコードする4種類のタンパク質、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)がかならず1対を成している事に起因します。

G-C
T-A
の様に、結合する相手が決まっているので、どこかのタンパク質が欠損しても残された一方のアミノ酸に対を為すアミノ酸を修復するだけで済みます。

この様にDNAのどちらか片方の鎖の切断は、ほぼ完璧に修復されます。
これはアミノ酸一個だけの欠損だけでは無く、連続する何十個単位の欠損の修復にも有効です。
修復後にチェックする機能も備えています。

■ 二本鎖の修復はちょと複雑だ ■
DNAの2本鎖の両方が欠損した場合の修復は一筋縄では行きません。DNAは2本鎖切断も巧みに修復している事が近年判明してきています。

1)相同組換え(homologous recombination: HR)
  ・DNAのアミノ酸配列は繰り返しが多い

  ・欠損したアミノ酸群に相当するアミノ酸群をコピーして修復
   時々、異なるアミノ酸群をコピーするというエラーも発生する

2)相同末端再結合 (Non-Homologous End-Joining: NHEJ)
  ・切断されたDNAの末端同士を結合するという強引な修復
   DNA情報の97%はジャンク情報だと言われ、相同組換えよりも、実際的な問題の発生は少ないとされる。

3)SOS修復
  ・大腸菌(下等だが、環境対応に優れた生物)などで確認される修復
  ・DNAが大量に損傷すると、応急処置的に大量のタンパク質が作られる
  ・DNAの損傷箇所に結合する塩基対は通常の塩基対で無い場合もある
   必然的に修復エラーが含まれるが、遺伝子変異による環境適合を促す
   これは、DNAの破壊による「死」よりも、テキトーな修復による変異を選択する生存戦略。

■ 修正エラーまで修正するDNA ■
一本鎖切断や二本鎖切断の修復は、エラーが無い訳ではありません。
そこでDNAは修復された後、さらに修復エラーを検出して修復を行います。

 

DNAの修復を担うDNAポリメラーゼはエラー箇所で停止してしまいます。すると、損傷の状態によって、いくつかの違う方法の修復が始まります

1) エラー箇所を単純に取り外す
2) 二本鎖修復と同様に似た配列のDNA群を結合する
3) 強引に適当な修復をして乗り越える
   (TLS: Translesion Synthesis, 損傷乗り越え複製)

エラーを単純に切り離しても、DNA情報の97%はジャンクですから、その影響は限定的と言えます。
むしろその様な修復が行われという判断は、DNAのその箇所がジャンクであるという判断の元に行われるのでしょう。